鬼海弘雄「東京夢譚」 | Photograph days  

鬼海弘雄「東京夢譚」

/Posted:2017.02.20

鬼海弘雄と言えば、浅草寺の境内で撮影したポートレート群の印象が強い。ダイアンアーバスが異形の人々を捉えた写真の類かとも思えるが、鬼海弘雄の写真に写る人々は奇異な格好をしているが、異形なわけでなく彼ら独自の世界観のなかでポリシーをもってその姿を積極的にさらしているようにも感じられる。

さて本題。その鬼海弘雄が撮りためた東京の風景がまとめられたのが、この「東京夢譚」である。東京の街を撮った写真としては「東京迷路」に続く2冊目にあたる。 最近、東京(しかも家からあまり離れない範囲)でしか写真を撮らなくなった自分にとって、著名な写真家がどのように東京を捉えているのかというのは非常に興味を持つ。それゆえ、この本を見かけたとき、ふと手にしたというわけだ。

全編6x6のモノクロで撮られた写真。鬼海弘雄の浅草寺のポートレート写真は、撮影者の世界と被写体の姿によって、鑑賞者にぶつかってくるように感じられる。それに比べ、この東京の写真は静かで穏やかだ。長い期間(1980年代から2000年代)かけて、そしてこれだと思うものにしかカメラを向けないという姿勢で撮られたせいだろうか。

意図的に作り込んだ構図ではなく、ストレート。それでも、美しいバランス。写真家のストレートな眼差しで選ばれた"場所"たちであることを感じさせる。そして、 どの写真も空間の広がりを感じる。東京は建物が密集していて、広がりを感じさせる風景は撮りにくいものだ。

僕がどうしても気になってしまう写真は、千代田区九段の写真だ。靖国通りにかかる歩道橋から撮られたものだ。歩道を歩くサラリーマン、その向こうに見える靖国通り神社の鳥居。これらをこのように収められるものなのか。そして、これが写真としては成立している。

長い写真人生がもたらす技なのか、それとも鬼海弘雄の類稀なるセンスなのか。おそらく、両方なのだろう。僕が今後ずっと写真を撮り続けても、このような写真を撮ることはできないんじゃないか(すでにこの写真集で見てしまったから、当然撮ることはないのだが)。

僕も、僕にしか撮れない東京を、僕が見た東京をまとめて見たいと思って仕方ない。

東京夢譚―labyrinthos
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